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警告の火となって燃え続ける 演出:佐藤利勝
♠平和のバトンとして
戦後80年をむかえた今年、劇団員の中から戦争や平和を題材とした作品を上演したいとの熱い思いがあり、そこで選んだのが「銀河鉄道の恋人たち」です。初演した2017年の7月7日に国連で初めて核兵器禁止条約が採択され、2021年に発効。 今年の9月時点で署名国は95か国になりましたが、核の傘に依存する日本はまだ署名していません。 昨年被団協は、ノーベル平和賞を受賞しました。 核兵器の使用が現実の脅威となっている国際情勢の中、被爆体験を証言し続けてきた被爆者の努力が受賞の重要な理由の一つです。 そんな中、現時点での世界の核弾頭の保有数は1万2千発を超えているそうです。 核は絶対に使ってはなりません。 私たちも平和へのバトンの一翼となれる事を願って取組んでいます。 ♥ヒロシマ・ノート
今回の創造過程で大きな発見がありました。1994年にノーベル文学賞を受賞された大江健三郎さんの「ヒロシマ・ノート」の最終章「広島へのさまざまな旅」の中で示された出来事でした。 4才の時に被爆して孤児になった青年が、20年後に白血病におかされます。 その後彼は印刷会社に就職して精一杯生き、一人の娘と愛しあうようになり婚約。 恋人は楽器店につとめていました。 まさに登場人物の設定そのものだったのです。 2年たって執拗な嘔気に悩まされ再入院、苦しみの果てに死亡。 その直後、彼女は睡眠薬による自死を遂げるのです。 劇作家の大橋喜一さんが、このエピソードに震撼され、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフに、二人を銀河鉄道に乗せたのです。 更に作品の中に医者が登場し原爆での悲劇を訴えますが、ヒロシマ・ノートでも度々描かれる日本赤十字社広島原爆病院の院長だった重藤文夫さんがモデルであり、大江健三郎さんは重藤さんから二人の事を聞いたのでした。 ♦広大なスケールのドラマの中で
今年の8月、数人の劇団員が広島に行き平和記念資料館などで学んできました。劇団では、第五福龍丸展示館、原爆の図丸木美術館に行き、原爆の社会的被害・残酷性、身体や心への人間的被害・苦しみを学びました。 「銀河鉄道の恋人たち」は、原爆というあやまちを、被爆者の恋愛や生き方を軸に描き、人間の生や死・尊厳を「銀河」という広大な宇宙(世界)から俯瞰・昇華する事により……過去を知り 今を問い 明日への道を示すドラマです。 ♣新しい仲間とともに
今回、二つの出会いがありました。太吉と船員を演じてくれる本吉健一さんと、舞台美術を担ってくれた河野佐和子さんです。 味のある演技と、新しい舞台美術にご期待下さい。 そして中学生の準劇団員3人の出演です。 原爆被害の実相を学びながら一生懸命取り組んでいます。 若者を含め多くのお客様に、この作品を観て頂きたいと30才までは千円という枠を設定しました。 13人の出演者が、作品を通して「警告の火となって燃え続ける」被爆者たちの思いを受け継いでいきたいとけいこに励んでいます。 皆さまのご来場を心からお待ちしています。 |